【問題】 国の財政に関する次の記述のうち、日本国憲法の規定及び最高裁判所の判例の
趣旨に照らし、正しいものはどれか。
1 法律上は課税できる物品であるにもかかわらず実際上非課税として取り扱われてき
た物品について、通達により新たに課税物件として取り扱うことは、違憲である。
2 皇室の財産授受に関する国会の議決には、衆議院の優越が認められるが、皇室の
費用に関する国会の議決には、衆議院の優越が認められない。
3 予算案について、衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした場合におい
ては、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときに、予算として成
立する。
4 国会の予算修正により新たな支出の追加、すなわち歳出予算の「項」の追加をする
ことは、内閣の予算提案権を損なうものであり認められないとするのが、政府の立場
である。
5 憲法第84条は、租税の賦課又は変更に当たっては法律の根拠を要する旨を定め
ているが、租税以外の営業許可に対する手数料、各種検定の手数料、郵便為替の
料金等についても、国会の議決が必要である。
解答
【解説】 正解 5
1 誤り 最高裁は、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものであれば、違憲
でないと判示した(最判昭33.3.28)。
2 誤り 皇室の財産授受に関する国会の議決は憲法8条に基づくもので、両議院
は対等とされている。他方、皇室の費用に関する国会の議決は同法88条に基
づくもので、衆議院の優越が認められている。
3 誤り 予算については、衆議院の再議決制は認められておらず、両院で異なっ
た議決をした場合において、両院協議会でも意見の一致がみられないとき又は
参議院で一定期間議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。
4 誤り 政府は、国会の予算修正は内閣の予算提案権を損なわない限りにおい
て可能との立場をとっているが、「項」を新設する修正も、あり得るとの見解を示
している(1977年の政府統一見解)。
5 正しい 形式的に租税でなくとも、国民に対し強制的に賦課される金銭について
は、租税法律主義の趣旨から、国会の議決が必要であると一般に解されてい
る。なお、財政法3条は、この趣旨を確認したものと考えられる。
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